「履物を揃えなさい」
学校の先生や大人から、こども達がよく言われる言葉ではないでしょうか。
『外国に行くと、日本のことがよくわかる』とよくいわれます。
以前、仕事で来日した外国人男性のすまいを訪問する機会がありましたが、玄関の靴はいつも天地が逆になるほど脱ぎ捨てられ、まさに“雨のち晴れ”、一般的な日本人から見るとまさにカルチャーショック、という状態でした。
『履物を揃える』という習慣は、日本人特有の習慣のようです。
履物の揃え方について「剣道礼法と作法」(馬場武典先生著)には、以下のように書かれてあります。
※きちんと揃えることは、相手にこころよい感じを与えるということで、礼儀作法の第一歩である。
更にその揃え方にしても、靴箱に入れる入れ方は、踵の方を奥にして入れ、靴の中の汚れが見えないように靴先(足の甲の部分)を手前にし(写真①)、便所などで使う共用のものの並べ方は、次に履く人が履きやすいようにという思いやりから(自分にとっては脱ぎにくいけれども)、むこう向きに並べる等の心づかいをする(船出の形)(写真②)。 (以上、抜粋)
剣道大会会場のトイレでは、スリッパが整然と揃えてあるときもあれば、残念ながら乱れているときもあります。
心ある人は、その乱れたスリッパを、あとから入ってくる人が履きやすいよう、つま先を揃えてくれます。
しばらくして、多くのひとが行き交い、せっかく誰かが揃えてくれたスリッパが乱れていても、必ず誰かが揃えてくれます。
心ある人は、ほかの誰かがも見ていなくても、スリッパをきちんと揃えてくれます。
汚いとか、めんどくさいとか、そんな気持ちを乗り越えて、やってみると心が強くなります。
ほんの小さな良心でも、世の中に貢献している自分が実感できるはずです。
『一隅(いちぐう)を照らすものは、国の宝なり』
“それぞれが、それぞれの立場で、その場所を照らす行いを精いっぱいやれば、世の中が良くなる。そういう人こそが、国の宝である”という意味です。
「はきものをそろえる」
はきものをそろえると心もそろう
心がそろうと はきものもそろう
ぬぐときに そろえておくと
はくときに 心がみだれない
だれかが みだしておいたら
だまって そろえておいてあげよう
そうすればきっと 世界中の人の心も
そろうでしょう
(鎌倉時代初期の禅僧、道元禅師の教え)
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